一人(ちゅい)助け(たしき)助け(たしき)【一人一人、助け助け合う】

立憲君主制を尊重する立場から、自他の個人の尊厳を守る有権者同士の緩やかなつながりで共同体を尊重する道を探ります

ゼレンスキー大統領の国連総会演説所感

 ウクライナのゼレンスキー大統領が日本時間9/20日午前3時頃に国連総会で行った演説の訳文を日経新聞のWebページで閲覧した。

www.nikkei.com</center>

 ゼ大統領に対して筆者はウロ戦争開始直後の文言から「外交音痴ではないか?」と疑っていた。
 そのため、この戦争でもっとも国際法上の責任が重いのはプーチンであると認識しつつも、安易にゼ大統領を英雄視する事は危険だと考えていた。

 
 しかしながら、上記の演説における「兵器を制限する条約は多く存在するが『兵器化』に対する真の制限はない」とする指摘は示唆に富んでいる。
そして、いわゆる軍需産業が生み出す重火器以外の「兵器」について言及する。

 
 最初の例として「食料の兵器化」をあげる。ウクライナの主要な港を封鎖する事で食料不足を兵器化しようとしているとの事だ。
これは文字通りの兵糧攻めであり、食料自給率の低さを散々指摘されてきた我が国も他人事ではない。

 
 次に「エネルギーの兵器化」。ここではロシアが原発技術の輸出で他国の発電所を汚らしい爆弾に仕立てていると述べる。
原発を攻撃すれば、核を保有しなくても、同等の攻撃力を発揮できると言いたいのだろう。
 この様な懸念は東日本大震災以降、民間で何度となく指摘されてきた問題だが、何故か「国防、国防」と五月蝿い保守論壇で顧みられることがなかった問題だ。

 
 「3番目の例は子どもたちだ」と述べるが、この中で「連れ去れた子どもたちはロシアにウクライナを憎むように教えられ、家族の絆は引き裂かれる」とある。
つまり「教育の兵器化」だ。これまた所謂「自虐史観」とそれに対する極端な無病論の二極化に悩まされてきた我が国としても他人事ではない。

 
 注目すべきは終盤の「せめてもの救いは、まだ人類は気候を武器として使う方法を身につけていないことだ」とする発言だ。
 突飛な感があるが、異常気象が世界的な課題である以上、それを解決する技術が今後発展したとして、その技術が軍事利用される可能性はある。
 しかも、仄聞するところによると世界の自然災害による被害の20%が日本で発生していると聞く。危機感をもってしかるべきだ。

 
 重要な事はその様な「兵器化」に対して、あくまで国際法で対峙しようとする姿勢だ。
 それは「ウクライナに対する戦争の目的は1つ。我々の国土や人々をあなた方や、ルールに基づく国際秩序を攻撃する武器に変えることだ」という言に現れている。

 
 ただし、その方法論として、文末にあるような「既存の安全保障の枠組みのアップデート」「国連憲章の復活」には同意しかねる。
 何故ならゼ大統領自身が冒頭で言うように、話し合いの場である「国連総会」は「侵略者をとどめることに対し、それほど積極的な役割を果たしてこなかった」のである。
 これはもはや、「既存の安全保障の枠組み」も「国連憲章」も金属疲労を起こしている証左だろう。
 そのため今必要な事は「既存の安全保障の枠組みのアップデート」「国連憲章の復活」ではなく、「新しい世界秩序」へのフルモデルチェンジであると考える。