一人(ちゅい)助け(たしき)助け(たしき)【一人一人、助け助け合う】

立憲君主制を尊重する立場から、自他の個人の尊厳を守る有権者同士の緩やかなつながりで共同体を尊重する道を探ります

県民党的行政の再建の可能性を考える

 那覇市長選は自公が推薦し、前市長の支援する知念覚氏が当選した。
 筆者自身は民主主義の昇華のために、選挙の投票理由は「政策の充実さ」と「ディベートを深められるか否か」で決められるべきと考えているので、特に後者に関して那覇市民の判断を非難することは出来ません。
 また「ものづくり」が日本の国柄のひとつで考えている立場として、他者が簡単に真似できない技量や視点には敬意を表したいので、知念覚氏が行政マンとして高い手腕を持っているとも聞いており、得難い人材である事も承知しています。
 ※そういう点で言えば、渡具知武豊名護市長はともかく、松本哲治浦添市長にも同様の念を抱いています。

 とは言え、オール沖縄内で推薦候補者、前職の那覇市長、県知事の間で連携の悪さが露呈したという点では後味の悪い選挙であった。
 詳細な情報は分からないが、琉球新報那覇市長選に関するWEB記事を追った所、城間幹子前市長が引退を表明した二日後には自民党が知念氏擁立に動いていた事に比べて、オール沖縄内で後任を誰にするかという話が出ていなかった事からして、機先を制された感はある。そもそも論で言えば、公の場で城間氏が後継指名し、オール沖縄が承認するという流れが組めていない以上、自陣営が現職であった優位を全く活かせていない点は大問題である。

 しかし、終わった事を愚痴っても仕方がない。今は、オール沖縄の原点である「保革共闘」を如何にすべきかである。

 そのために有権者の本音を筆者なり推論したい。
 まず、選挙イヤーの今年を振り返ると「オール沖縄は知事選を制するも市長選は全敗」「知事選においても宜野湾、名護市は対立候補の方が得票は高かった」「知事選で有権者の関心事項は1位は経済で基地問題は2位に転落」といった事象から、有権者の本音は「基地負担の軽減はして欲しいが、解決に向けたロードマップを示して、悪戯に政争の具にしないで欲しい」事と、「コロナ禍で打撃を被った経済の立て直しを最優先して欲しい」事であろう。
 まとめると「観光客の誘致という点で佐喜眞氏では弱すぎるから、デニーさんには続けて欲しいが、左派勢力を何とかしてくれ」という事ではないか。これは筆者自身も気づいた時に驚いたが、その様に仮定するとオール沖縄共産党などの左派勢力に封印を要請しなければいけないのは、実は「辺野古以外の基地問題」ではなく「コロナの2類堅持」という事になる。

 ただ、であれば選挙前のアンケートベースで言うところの「コロナ禍における優先事項」で「感染抑止よりも経済活動優先」もしくは「コロナ5類引き下げ」に「賛成」しており、且つ「辺野古移設」に「反対寄り」の候補者を増やせば、無党派層の取り込みは意外に容易いのではないかと考えています。僥倖なのは先の参院選で再選した伊波洋一氏が、読売新聞のアンケートを参照すると、まさにこれに当てはまっています。意外な点では水道橋 博士氏も該当していましたし、興味深い事に先の参院選で全員落選したとはいえNHK党に該当する候補が多かった事です。

 後は僅かな希望ですが、那覇市長選を巡って市議会の自民党会派も分裂している事や、知念覚氏が行政手腕と党派性の薄さを活かして、稲嶺恵一元知事や初期の仲井眞弘多氏の様に沖縄の特殊事情にける問題で政府と一線を画して地元の立場を強く主張していけば、「県民党的な行政」を目指す事自体は、作業レベルで難しいことはあまりないと思っています。

 残すは当事者間の感情のしこりなんですが、これが最も厄介そうで…。

那覇市長選雑感【開票前】

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 琉球新報によると那覇市議会与党市議団が、23日投開票の那覇市長選で自民、公明の推薦する前副市長の知念覚氏への支持を表明した、現職の城間幹子市長に対し、その撤回を求めたとの事だ。

 

 それに対して城間市長は「これまでの私に対する支援には感謝を申し上げる。私自身は新基地反対をこれからも堅持する。私が担ってきた市政を継続してもらえる候補者として判断した」と求めつつ、撤回には応じなかったという。

 

 前回に引き続きであるが、この城間氏の発言は不可解である。
 まず自身は「基地反対を堅持する」という事であるが、繰り返すようにこれが「オール沖縄対自公」の最大争点であり、城間氏自身がオール沖縄の推薦を受けて二度の市長選を戦った以上、後継者である知念氏を支持するにあたり、これを継承する事を条件にしなければ筋が通らない。
 それでは当の知念氏の辺野古問題に関する認識は如何なるものか。
 琉球新報のWeb版で市長選に向けたクロス討論を文字起こししたものがあるので、そこから引用しよう。

 

ryukyushimpo.jp

 

 基地を挟んで右か左かに分かれてきた中で苦渋の決断を強いられてきたウチナーンチュを目の当たりにしてきた。県民投票の結果と民意は尊重されなければならず、どのような形で尊重するかは日米両政府がしっかりと考えを示してほしい。
 名護市民は苦渋の決断をし、市長選で渡具知武豊氏が再選した。従って渡具知市長の国と県の裁判を見守るという姿勢は非常に重いものがある。市町村は互いの街づくりを尊重しなければならない。渡具知市長の姿勢を尊重したい。

 

 単刀直入に言って前半部分と後半部分が相反しており、何を言いたいのか全く分からない。

 渡具知市長の「国と県の裁判を見守るという姿勢」というが、要するに県民投票で示された「反対」の意思を市政に反映させる気がないわけで、この姿勢を尊重すると言いながら、前半部分では(反対が賛成を上回った)県民投票の結果と民意は尊重されなければならないというのは、ダブルスタンダード以外の何物でもなく、本当にこのような発言があったのか疑いたくなるほどだ。

 但し、信頼できる現地の声を参照すると元来、知念氏の行政手腕は遺憾の無いものであり、単純な経験値で言えば対立候補の翁長雄治氏を凌ぐものがあるらしい。
 失礼を承知で言えば、筆者もTwitter等で雄治氏の発言を見るに、もう少し修行を積んだ方が好ましいと思う。今のままでは野村克則化する恐れがあるのではないかと見ている。
 そもそも翁長知事が最後は県知事を務めた事で誤解されているが、元々翁長知事にとっての政治家としての最終目標は那覇市長であったのだ。
 確かに県知事はその比ではないが、県都那覇の首長の椅子を軽く考え過ぎではないかという懸念を抱かずにはいられない。

 

 しかし、この様に考えると翁長知事の惜しむべきは後継者の育成と自身の健康管理が不十分であった事ではなかろうか。

自公が推薦する知念氏の支持表明をした城間幹子那覇市長を批判する

 全く理解しがたい。
 10月23日投開票の那覇市長選で、今期限りで引退を表明していた現職の城間幹子市長が自公明推薦の知念氏を支持すると表明。
 正直に言えば故・翁長雄志元知事の跡を継ぐ格好で市長に当選した城間氏の立場を考えれば、「よりにもよって」という感はなくもない。無論、現地の事情と言うのは外から見ていても分からないと思うので、そこは立ち入らず、ここでは上記記事中の城間氏の発言を検証してみたいと思います。

 

 →政治姿勢の変化ではないか、という質問について

「私はスタート地点から真ん中、保守中道だ。私自身は変節していない。皆さまがオール沖縄対自公の構図をつくった。選挙なのでそうなると市民も分かりやすいと思うが、その構図ではない中で市政運営はなされている」

 

 「皆さまがオール沖縄対自公の構図をつくった」との言の「皆さま」が具体的に誰を指すか、引っかかる部分ではあるがここではそれは問わない。問題は明らかにオール沖縄対自公の構図を沖縄側がつくったと言っている事だ。だが、「オール沖縄対自公」の争点は辺野古移設の是々非々であり、これを「唯一の解決策」と押し付けているのが政府の側である以上、オール沖縄対自公の構図を県民の側がつくったというのはおかしい。

 「私はスタート地点から真ん中、保守中道だ。私自身は変節していない」との言も認められない。自公政権が真に保守中道が手を組むべき相手かどうか疑問であるが、この件もここでは問わない。それよりも問題なのは、やはりオール沖縄の原点が「保革合同」である以上、「自分が保守だから保守と手を組む」という発想自体が立脚点にそぐわず、変節という評価は免れない。

 

 →公推薦の候補を応援することで、オール沖縄側から批判される可能性について  「私は2期8年間、翁長雄志前市長からバトンを受け継いで那覇市政を発展させ、市民の皆さまにご理解いただけた。それが私のやるべきことだった。恩返しができたんじゃないか」

 

 この発言は全く許容できない。

 繰り返す様に翁長雄志氏は「自ら望んだわけでもない基地のために、いがみ合う県民同士を一つにまとめたい」との想いを政治の原点としていた。そしてその最期の遺志が辺野古移設問題であり、それが解決していない以上は「恩返しができた」などという事は口が裂けても言えないはずである。
 城間氏に限った話ではないが、かりそめにも沖縄で保守(勿論、この場合の保守とは単に反共・反サヨクの意味ではない)を名乗るなら、今沖縄保守の本分とは何か、故・翁長雄志氏の言葉からよくよく考えて頂きたい。

 

「割れていた県民の心を一つにするには、まず保守の側から真ん中に寄らないと、革新の側から来てくれるということはたぶんないだろうと思ったからです。ある意味では私自身の政治的自殺行為とも言われましたが、私は割れた心を一つにすることを目標にしてきたので迷いはありませんでした」 (〇七年に教科書問題で県民大会の共同代表になった際の発言)

 

「政治家としては大変恐ろしかった。(中略)保守の側から『おまえいつから革新になったんだ』と非難の手紙や電話も来た。だが、保守でなければウイングを広げることはできない。革新の皆さんには純粋性と潔癖症と本当にすごい誇りがあるんだけど、包容力という意味では弱い。誰かがやらなければできない。だから、僕が真ん中へ行った」(保守政治家でありながらオスプレイ反対運動に立つことへの迷いや葛藤はなかったか、という質問に対して。沖縄タイムス社『沖縄を語る・1』より)

2022年沖縄知事選の結果を受けて

www.okinawatimes.co.jp

 沖縄知事選が終了しました。
 繰り返す様に「平和主義でない辺野古移設反対」を主張する立場上、玉城デニー知事が再選した事に安堵しています。

 但し、現実的な問題として本当に厳しいのはこれからだと思います。
 事実、今回の知事選の関心事は「基地問題」よりも「経済」が上位に来ており、コロナ禍における玉城県政の対応が後手後手に回っている事を考えると、経済の復興と基地問題の解決という両輪でロードマップを描く必要があるでしょう。
 

 くどいようですが、小生は今回の様なコロナ禍で取り得る策は「感染者が増えないようにする」「感染者が増えても大丈夫なようにする」という二つがありながら、いまだに政府与党から各都道府県知事まで前者一辺倒である事が不満を覚えます。
 沖縄においても医療現場と観光業界の溝は深いと仄聞しております。まさに基地問題同様に、コロナを挟んで県民が分断されている中でお題目の様に「感染症対策」を唱えるのではなく、医療体制を整える事に注力していただきたい。(現場で奮闘する従事者の方々には敬意を表したいですし、飲食店の利用者や観光客に言いたい事があるのも分かりますが、「感染者が増えても大丈夫なようにする」ことが結局は医療従事者自体を救うと思います)

 話を基地問題に戻しますと、向こう4年間の市長選での地盤固めも当然考えないといけません。ただ、これは県議時代は対立していた座喜味一幸氏が自民党を離党したのを機に宮古島市長選で支援に回って当選させたような例を活用すれば良いと思います。極端な話をすれば、元々佐喜真淳氏だって「県外移設」を公約にして宜野湾市長選に初当選している訳ですから、やり様はあると思います。

 

www.nikkei.com

 

 副知事にしても指名権は知事にある訳ですから、中央との交渉のパイプに必要なら政策通の下地みきお氏を据えるのも悪くないと思います。翁長元知事も那覇市長時代は政敵であった宮里千里氏を市長公室長に抜擢している事を考えれば出来ないことはないと思うのですが。

 

www.okinawatimes.co.jp

 

 後の課題としては世代交代も大切になると思います。参院選伊波洋一氏が僅差で当選してくれたのは良かったですが、伊波氏ももう70を越えている事を考えると若い世代を発掘して欲しいですね。そういう点ではうちなーありんくりんTVで基地問題を積極的に配信している多嘉山侑三氏が名護市議選挙に当選したことも注目しております。

女王陛下の崩御に際して、改めて日本こそ「希望と栄光の国」とする事を誓う

イギリス エリザベス女王死去 96歳 追悼の声相次ぐ【詳しく】 | NHK | 訃報



 エリザベス2世女王陛下の崩御を悼みます。
 小生は大学時代、いわゆる「駅前留学」をしていたため若気の至りで「いつかは英語の母国を旅したい」と想っておりました。そのため、4年生の夏に一週間ほど、英国へバックパッカーしてきた(と言っても今から見れば突っ込み所満載の旅程でしたが)のですが、その際英国王室が非常に「開かれた王室」である事に驚いたものです。
 勿論、これは悪い影響も多分にありましたので、日本の国の皇室がこれを真似る必要はないと考えます。
 その一方で、この旅行を契機として英国文化への興味を持った事から、日本の国こそ"Land of Hope and Glory" (希望と栄光の国)としたい着想を得られたのは良かったと思います。
 目下のコロナ禍で、とても「希望と栄光の国」とは程遠い厳しさでありますが、めげずに微力を尽くしていきたいと存じます。

沖縄知事選、事前調査を見て思った事

ryukyushimpo.jp

 沖縄知事選の投票先調査という事で、琉球新報が実施している事は差し引く必要がありますが、元より「平和主義でない辺野古移設反対」を主張する立場である小生としては、玉城氏リードと言うのは朗報ではあります。
 但し、同調査で県民の一番の関心であるとされる「経済・観光・雇用」の中に、当然コロナ禍の経済政策と復興も含まれると思うので、この点で玉城県政が失点を重ねている事は否定しがたく、予断を許さない状況だと思います。
正直、コロナ禍の停滞感から今回の投票率は下がるかと思っていたのですが、県民の意識は非常に高いという事で、その分結果についても言い訳が効かないと思います。玉城知事はコロナ禍への出口戦略と、県民投票で示された民意の実現に向けたロードマップを明確に描いて頂きたいです。
 他方で、追い上げる佐喜眞氏に有利な要素があるかと言われれば首を捻りたくなります。仄聞した所によると、先の知事選で散々足を引っ張った「相手陣営をディする支持層」がまた騒いでいる所を見ると、前回の敗因分析が全く出来ていないのではないかと疑わざるを得ないです。(余談ですが前回の知事選での佐喜眞陣営の戦い方は、オール沖縄陣営に追い落とされる格好になった仲井真元知事ですら苦言を呈しています。國場幸之助『「沖縄保守」宣言』参照)
 ただ、佐喜眞氏は当選しなくとも前回よりも差が狭まれば、岸田内閣としては現状を追認するロジックは成り立つのでは、実は自民党としては楽な戦いではあるでしょう。
 下地氏については、政策の充実度は注目に値するので、知事になる事は無理でも何らかの形で政治に参加してもらえると良いとは思っています。勿論、それにはミキオ算垂れ無しの禊も済ませるのは必須ですが…。
 色々言ってきましたが、今回の知事選で思う所は…佐喜眞氏には申し訳ないが…前回と同じような結果になれば、早々に岸田内閣退陣の可能性も出てくるので、個人的にはそれが理想です。
 ああいう毒にも薬にもならぬ首相が案外、コロナショックで日本が受けた傷口を広げると思うので。

ゴルバチョフ元大統領のこと

 遅ればせながらゴルバチョフ元大統領が逝去されたとの事でご冥福をお祈りいたします。

 ご都合主義ではありますが、やはり私個人はゴルバチョフ氏と言えば、01年当時に那覇市長であった翁長雄志氏の招聘に応える形で訪沖された事が思い起こされます。

 米軍基地の多く残る沖縄に、元ソ連の最高権力者であるゴルバチョフ氏が訪れた事は保革の分断を乗り越えるという意味でも、冷戦構造の終結という意味でも象徴的な出来事であったと察せられます。

 今、そのソ連の後に生まれたロシアが大きな争いを起こしている事は誠に皮肉ではありますが、この分断を如何に乗り越えるか、微力ながら知恵を絞りたいと思います。